老人医療NEWS第6号 |
国際的な高齢化の波の中で、いま日本そして世界の先進国にとっては、よりよい老人医療のシステム構築が、重大な政策課題となっている。
老人に必要な医療は、できるだけ老化の進行をくい止め、傷病の予防、治療、リハビリテーションを充実して、日常生活や社会生活の障害をとり除き、さらに後遺症をもっている場合も、社会生活に再適応できるようにする医療である。
また、老人医療の基本姿勢は、プライマリ・ケアを基盤とした全人的医療、包括的医療、地域医療でなければならないが、このような医療では、医師を中心とした看護、リハビリテーション、福祉等の関係職員によるチーム・アプローチが不可欠である。
優れたチーム・プレーによって、積極的に前記のような医療を行い、患者や家族の抱えている問題を解決し、社会復帰させていくことが老人医療の専門性といわれるものである。
ところで、日本においては、これから急いで老人の在宅ケア、デイケアの充実と老人保健施設の整備を推進しなければならないという重大な課題がある。しかし、国民性や社会環境、さらに八十五歳以上の超高齢者の著しい増加などを考えると、どうしてもかなりの数の優れた老人病院が必要であると思われる。
老人病院の病床は、毎年約1万床ずつ増えつづけ、現在七十歳以上の老人の入院患者数約45万人のうち、約10万人が老人病院に入院しているのであるから、老人病院の近代化は、緊急の課題である。
老人病院においては、一般医療、看護、介護に加えて、特にリハビリテーションのパワーアップが強く望まれる。このリハビリテーションは、老年医学的リハビリテーションであって、人間性の障害の予防と回復を主とするものであり、その際重要なことは、主治医と病棟スタッフ間等の総合的な協力である。
完全な臥床のもたらす二次的な合併症を防ぐために、早期離床をはかること一つをとっても、リハビリテーション部門の医師、ワーカー、ナースたちのみでなく、他科の病棟関係者が積極的に協力しなければできるものではない。また、老人病院の病床回転率を高めるためには、リハビリテーションの強化のほかに、老人保健施設、特別蕪民諧幌老人ホーム等との協力が必要であることはいうまでもない。
最後に、これからの老人医療においては、地域の病院の老年医学科や老人病棟が重要となろう。その主な役割りは、老人患者を対象とした正確な診断と評価、比較的短期の適切な治療とリハビリテーションであり、老人病院やケア施設とも連携して、老人患者の"ふり分け"を行い、同時にデイケア、ショートスティの機能をもち、在宅ケアの支援体制を受けもつものである。このほか、准ホスピスとして末期がん患者の入所施設や老人精神病棟も重要であると思われる。
老人医療と老人病院の発展を心から祈りたい。
折りたたむ...西山堂病院は、東京から北へ上ること120キロ、茨城県常陸太田市にあります。常陸太田市といってもご存じの方は少ないと思いますが、水戸黄門の名で親しまれている、水戸黄門の隠居所・西山荘がある地と言えば頷かれる方も多いことでしょう。今でこそ人口3万7干余人の地方都市ですが、大正7年、義父が「西山堂医院」を開設した当時は、桑畑やタバコ畑の多い農村に囲まれた、小さな田舎町でした。
義父が開設した医院は評判がよく6畳ほどの待合室はいつも患者で満員で、はみ出た人は診療の順番を待つため行列したそうです。治療代の遅れる人にも「いつでもいいよ」と請求せず、中には、代わりにと野菜や穀物などを届けてくれる人もいて、台所はそれらの物でいっぱいだったと言います。
そのようなことが今でも古老たちの語り草になっており、「医は仁術なり」を地でいった義父は、私どもの良き手本でもあり、その精神を大切にしております。いつでも、どこへでも往診に出かけていく習慣は、嫁の私にも、孫の、副院長をしている長女にも受け継がれ、夜中であろうが朝方であろうが、来院する患者は体の続く限り診てあげるようにしています。
老人ホームは1カ月で満床
私自身の医者としてのスタートは昭和17年、東京同愛記念病院小児科医としてでした。外科医だった荷見源節と結婚後の昭和22年に、常陸太田市からさらに北の福島県境、大子町に小さな診療所を開きました。義父の死で「西山堂医院」を継ぎ、夫とともに地域医療に携わるようになったわけですが、夫は37歳の若さで亡くなりました。それからの私は、残された1男4女を育てるために、診療に育児に一生懸命でした。
昭和47年、特別養護老人ホーム西山苑を開苑しました。老人ホームをと考えたのは5人の子供を全部医者にしたいと思っていましたので、私自身の老後の世話は子供に託せないだろうと考えたからでもあります。木村貞雄前会長(故人)の献身的な努力もあって社会福祉法人の認可、開設となり、開苑1カ月を待たずに老人ホームは満床になりました。
天皇陛下からご下賜金を
老人ホームを運営するのにともなって、お年寄りの患者が増え、西山苑の入所者も、私の医院との距離が少少遠いのが不安なようだったこともあって、昭和53年4月、西山苑に隣接して医療法人貞心会「西山堂病院」を開設するに至りました。3階、4階の病棟が廊下で継がったことで、入所者の容態が急変しても迅速に対応できるようになりました。
西山堂病院開設後は、母校の東京女子医科大学の関連病院の指定を受け、毎日、各科の専門教授、助教授陣が来院し、地方にいながら最先端の医療ができる充実した内容をもつ病院となりました。特二類の基凖看護もとり入れ、診療科目は内分泌内科をはじめとして糖尿病、循環器、消化器、呼吸器、リウマチ、神経痛などの内科、泌尿器科、皮膚科、小児科を標榜しております。
また西山苑も、厚生省で社会福祉畑一筋に歩まれた、柚木崎次郎苑長(前国立重度障害者センター所長)を迎え、老人福祉の思想と実践によって裏打ちされた日本有数のホームと言われるほど、充実した介護内容を誇れるまでになりました。昭和58年には、老人福祉に特別な貢献の由をもって、天皇陛下からご下賜金が授与されました。
特例許可老人病院開設へ
現在、8月開院を目指して特例許可老人病院「はすみ敬愛病院」の建設をすすめており、リウマチ、痛風センター、リハビリセンター、老人科、デイケアセンターなどを標榜してやっていきたいと思っております。
老人の病気、入院は、家族との問題が背景にあるだけに簡単ではありません。医療面だけでなく、老人の「生きる希望の持てる場所」として日々充実した生活を送れるよう、家族や地域ボランティアの参加を得て、徹底した看護と合わせ、温かい雰囲気づくりを目指したいと思います。
その点「はすみ敬愛病院」は、常陸太田駅から歩いて3分の地にありながら、周辺は緑豊かな田園風景といった静かな環境にあり、老後を過ごすには大変恵まれた条件を備えています。老人ホーム西山苑同様、安心して老後を託せる病院にしたいと考えております。
着々と進む"夢"の実現
私の夢は、私を育くんでくれたこの常陸太田で、お年寄りが病気になった時に、急性、慢性を間わず診てもらえ、そして老後の生活全般にわたりお世話できる小さな施設づくりでした。女医である私が、今日、このような夢を着々と実現できたのも多くの人に支えられ、良き協力者に恵まれたことも大きかったと思います。さらに今後、老人保健施設の建設を目指しており、ますます頑張らなくてはと思っているところです。
<付記>筆者は、5月24日に開催された日本女医会総会において、社会に貢献した功労により栄えある「吉岡弥生賞」を受賞されました。また、西山苑では、施設介護の体験をいかし、寮母マニュアルとして『寮母禁句集』『寮母気くばり集』『寮母ぼけ老人対応集』を発刊、テレビ、新聞等で紹介され、好評を得ています。
折りたたむ...(昭和62年度総会講演として、同総会後2時間にわたる講演が行われ、その概略を記載したものである。)
老人病院は、マスコミによって批判的にとりあげられることが少なからずある。いったい誰のための、何のための老人医療であるかを認識し老人医療というものをオープンに話せない限り、今後の医療の発展を望むことはできないであろう。
保健医療制度改革の現状
昭和61年は、3月に診療報酬改定、8月には地域医療計画のガイドラインが出され、12月には老人保健法改正法の成立と、これまでになく医療界に大きな動きのあった年であった。医療供給サイドとして考えなければならないことは、二ーズの量が極めて拡大しているという事実とともに、二ーズの質も変化しているということである。
つまり、今日の保健医療制度改革は、財政的な面とともに、ニーズの量と質への対応に追われているのである。言いかえれば、現状と制度がミスマッチをおこしている、と言えよう。
患者構成の変化とニーズの多様化
病院病床数をみてみると、昭和41年には約100万床であったものが昭和61年9月には153万床と約1.5倍近くに増床されている。この原因は、65歳以上の入院二ーズの増加であると考えられる。
昭和50年の70歳以上の入院患者数は35万人であり、その内訳は最も多いのが循環器系の疾患で38.6%、これに精神、神経感覚器系の疾患をあわせると50%のものがこの疾患に含まれた。昭和59年には、70歳以上入院患者数は52万9千人に増加し、その内訳も、循環器系疾患43.2%、精神、神経感覚器系をあわせると58%まで伸びている。急激に患者数も増加したが、その疾病構造も変わってきているのである。
死亡率をみてみると、65歳から79歳の人口10万当たりの死亡率は下がってきている。80歳以上についても、昭和40年をピークに下がっている。この原因は、脳血管疾患の死亡率の低下によるものである。この死亡率の低下は、老人入院患者の増加につながっているとみてもよいであろう。
ここで考えなければならないことは、この部分を誰がどのようにケアするか、また、ケアやリハビリテーションを特に必要とする医療構造と、急性疾患に対応する医療構造とは異なるものである、ということである。そこで、老人医療は慢性医療と決められがちであるが、果たしてそうであろうか。
平均在院日数であるが、精神、結核を除いたものでは33.2日、精神・結核も含めると40.9日、65歳以上の入院患者については87.2日、70歳以上の者になると94.7日となっている。また、在院日数100日以上の全患者数は49万6400人、このうち65歳末満の者が32万5600人を占めている。
こうみてくると、確かに、高齢になる程平均在院日数は長くなるが、老人医療のみが慢性医療ではないのである。65歳以上の全患者45万9300人と、65歳未満の慢性患者32万5600人をあわせた78万4900人が慢性患者ということになろう。これは全入院患者の65%を占めている。
病院別入院患者の構成ということになると、65歳以上の入院患者の病院の経営主体は、35.4%が医療法人、22.1%が個人となっている。病床規模にしてみると200〜299床のものが平均在院日数は長い。つまり、老人入院患者の占める割合も高いと考えられる。平均在院日数が6カ月以上の病院は、全病院の51.3%、一般病院では44.4%、特例許可老人病院では72.9%が占めている。
以上のように、この10〜15年間をみても、老人をめぐる医療は、患者構成からも、二ーズからも変化してきているのだ。そして、早急な対応を求められているのである。
老健施設と老人病院の動向
老人保健施設の施設基準、人員基準、運営基準等は、5月〜10月にかけての老人保健審議会において決められることになっている。今年度七施設のモデル事業が実施されているが、とにかく、来年4月1日より老人保健施設の制度はスタートを切ることになる。となると、最も新しい制度である老人保健施設に、力を入れた政策が展開されることが、容易に想像できよう。
老人病院をめぐる大きな問題は2点ある。第1点は、先に述べた老人保健施設の実施である。もう1点は、保険外負担という費用をめぐる問題である。
この2点とも、これまでの医療機関の感覚を脱した対応を行っていかねばならないであろう。
制度改革の方向
現在、厚生省には国民医療総合対策本部が設置されており、6月に中間報告が出された。目的は、医療の実態に取り組み、合理化をはかろうとするもので、第一〜第三部会、総合部会に分かれている。
第一部会では、長期入院の是正の検討、大学病院のあり方についての検討、第二部会では医療費の地域格差の是正、かけ込み増床の抑制政策等の検討、第三部会では訪問看護、医師の指示の包括化、老人施設体系等についての検討などが行われている。そして、総合部会では、老人医療費の費用分析、国民医療費の規模のあり方等の検討が行われている。厚生省では、このようにかなり広範な議論が繰り広げられ、検討を重ねているのである。
老人病院の行向
今後の医療における構造対策として、質の向上、質の転換、マンパワーとシステムの見直し等があげられよう。よりよい医療の供給のために、入院から在宅への転換、医療情報の活用、基準看護制度・診療報酬体系等の見直し、マンパワーの養成および役割分担など、実態に即した対策が進められていかねばならない。
長期入院是正対策や在宅対策の強化が図られようが、老人病院にとって最も注目を必要とするのは、老人保健施設の整備促進であり、一般病院の長期入院患者対策であろう。
折りたたむ...臨床のかたわら、栄養学を教えて久しい。成人病、その他の疾患に栄養指導が行われ、治療に欠くことのできないものとなっている。ほとんどの成書には、これらのことが記されている。内容はどれも同じく、恐らく患者に指導する場合はこれによるものと思われる。
かくいう筆者も同様であるが、しかしここ数年、このことについて悩み始めている。摂取カロリーの多いものについてはカロリーを減らし、食塩の摂取量の多いものについては食塩を減らし、糖の多いものについては糖の摂取量を減らす、といった具合である。これによって生体内に含有しているこれらの成分を減じ、結果的に、疾患に対して良い効果をもたらすというのである。
人間の生活、生体機能の全体像をとらえるとき、果たして、これらの方法が良結果をもたらしているのであろうか。そんなはずはなく、どこか他の部分に無理のあることは否めない。生命維持に必須のカロリー、糖質、食塩、その他の栄養素を制限し、しかも、そうすることにより、不愉快な食生活を続けていかなければならないのは、大変なことと言わねばならない。私はこれを「死の方向への栄養指導」と名づけたい。それでは「生きた方向への栄養指導」はできないものであろうか。ここに、今まであまり興味を引かれていなかった、食物線維が登場することになる。
1975年、Burkitt,Towell その他の学者によって、摂取された線維素がそれぞれ、これらに対して重要な役割を果たしていることを知らされた。植物細胞壁からつくられている線維は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、ソグニン等の種類があり、各々が胃、前腸、後腸、結腸、盲腸等において特殊なコントロール的作用をしていることが徐々に分ってきた。結腸の疾患、糖尿病、動脈および静脈の血管等に、有効的に働いていると報じている。これこそが、患者に対しての「生きる方向への栄養指導」の一つのポイントといって良いであろう。今後は、高齢者にとっても口に合う、どんな物を食べても身体に障害を起こすことが少なく、安心して快適な人生を送れるような時期の到来が近くにあることを知るのである。
たとえば老人の貧血について、それは主として血液造器組織中に脂肪沈着が異常に高くなり、それによる機能の減弱によるとされている(勝沼)。線維は、とくにペクチン等は、脂肪代謝、胆汁成分(コレステロール等)を変化さす作用があるとされている。異なった各種の線維は腸のそれぞれの部分において、種々の代謝に対して、対応の作用をしているといわれる (1978,Marttin,East-wood)。
すなわち各種の栄養素を、これら線維素と一緒に食することにより、消化管内にて適当なコントロールを受け、消化吸収されることになる。慢性成人病、老人病および老人現象の際に、かく食することにより、必要以上の食事制限を受けることなくより楽しい生活の送れる日の早からんことを願っている。
折りたたむ...天本会長再選二期めのスタート
4月18日(土)午後1時より、年金基金センターセブンシティ(東京都)において、老人の専門医療を考える会昭和62年度総会が22名出席の下に開催された。
開会の辞に続き、天本宏会長より「現在の老人病院は機能があいまいであるために、その存在意義を問われている。老人の専門病院としての位置付けを明確にするとともに、摘格な判断のもとに機能整備を図らねばならない。それとともに、老人医療に対する正しい理解を深めていく啓蒙活動への努力を重ねるべきで点る」との挨拶がなされた。
議案審議は木下毅議長によって進められた。まず、吉岡充事務局長より61年度事業報告・会計報告が行われ、宮崎亮監事より監査報告が行われた。次に、天本宏会長より、62年事業計画案・予算案の説明がなされ、以上を万場一致のもとに承認された。
規約改正については、第二条賛助会員の項を特別会員と改める、第九条会員の項に免除規定を設ける、等の改正が決議された(下記参照)。また、新規規定として経理規定、給与規定が承認された。
役員改選については、任期2年の満了により審議された結果、天本宏会長の再選が承認され、その他役員については会長に一任することとなった。その結果、副会長、事務局長、幹事2名は留任とし、新規役員として幹事四名、監事2名が任命された。
最後に、大塚宣夫副会長を中心に保険外負担についての活発な討議が行われた。
以上をもって、午後3時に閉会の辞となった。
老人の専門医療を考える会 規約(抜粋)
(改正前)
第2条 本会の会員は、次の者とする。
(改正後)
第2条 本会の会員は、次の者とする。
厚生省事務次官を本部長とする、国民医療総合対策本部の中間報告が6月に発表された。
この内容をめぐっては、激烈な報道合戦があった。「医師定年制」とか「大学医療の見直し」「長期入院や老人医療の抑制」ということが断片的に報告され、6月12日の読売新聞の一面には、報告案が報道された。「特ダネか厚生省当局の意図的リーク」かは定かではないか、全容を示したものと捉えるのが素直であった。ただし、見出しが「老人慢性病には上限」というのが、気にかかるし、気に入らない。
「老人の慢性疾患は完治が難しいにもかかわらず、無駄な検査の繰り返しや"薬づけ"が行われている疑いが強く、老人入院患者の四割が六か月以上の長期入院を生み出していることから病気の種類によって現行の出来高払い方式は、定額制の方向に改善せざるを得ないと判断した」とある。また「回復する見込みが全くないのに治療を続けることには疑問を投げかけている」と書いてある。「本当か」。二面には「中間報告案要旨」とあり、そこでは「出来高払い方式を改善する」「延命のみを目的とする治療は考え直す」とある。
つまり、「改善」か"定額制"で「考え直す」が「疑問を投げかけている」ということになる。この記事の解説には「改革には政府の不退転の決意が必要」というおまけつきである。
最大の発行部数を誇る「読売」は、対策本部の考え方に大賛成で、老人医療費を抑制することはいいことだという判断を下した。それも、報告内容を誇張してまでもである。確かに、対策本部の言い方にも問題があるが「良質で効率的な医療をめざして」という副題が第二部にあり、これまでの抑制一辺倒の厚生官僚の主張が、ソフトに、または用意周到になったことを理解する必要があろう。厚生省には「一流官庁」になったという自惚れとともに「政策官庁」へ脱皮しようとする葛藤がある。特に、老人医療については、包括的な考え方すら不在という現状を厚生省自らが露呈しながら、必死に国民へのアピールを行っているとしか考えられない。
対策本部の「ねらい」が医療費抑制にあることは明らかだが、その方法が用意周到で国民へのアピールに努力しているとすれば、老人医療を実践する者は、甲の緒を締めなければならないことになる。ここで、厚生省と全面対決することはたやすい。しかし、日本古来の「自兵銃剣術」では、勝負は明らかである。ベネチア・サミットは、一見大成功に終ったようにみえるが、それは「経済戦争」でしかない。経済戦争には、「完全な勝利」はありえない。医療の問題も同様であろう。
報道が事実な「良質な老人医療を確保」し「患者サービスを向上」し「患者サービス選択の幅を拡大して自己負担の導入を検討する」ことになる。この判断は、当然であり、やむをえないことであろう。少なくとも当会の基本的主張である「老人の専門医療を確立する」ためには必要である。こう考えれば、問題は医療費であり病院経営である。
長期入院患者を生みだしているのは、医療費でもなければ、病院経営でもない。それは、病院以外の施策か無策に等しく、患者の二ーズに対応できるのが「老人専門病院」しかないからである。医療費を抑制し、病院経営を安定化し、患者サービスを向上するというのであれば、方怯はいくつもないはずである。
「老人保健施設」といっても、一年間に5万床できるわけでもないし、「慢性病院」というのであれば、かなりのケア・レベルが必要になる。さらに「患者のサービス選択」になれば、それなりの技術が必要となる。
患者の質の向上に対する要請は、「自己負担」で、しかし長期入院については「医療費抑制」、数に対応するためには「老人保健施設」というのが、対策本部の本音とも考えられる。こう考えると、当会の今後の活動意義も明確になってくる。
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