老人医療NEWS第14号 |
文化人や評論家、それに、現場の人間でありながら、しばしばマスコミに登場するものだからすっかり評論家のようになってしまった人達の多くは、老人問題を結局、制度政策の問題だとおっしゃっている。
「現在の制度の下ではいい看護はできない」とか「今の職員定数ではいい介護はとても無理だ」とか。「そうだ、そうだ、厚生省が悪い。日本の政府が悪い。社会運動を起こして制度政策を変えねば」というのは、まあ判る。ただ、こうした発言は間違ってはいないものの、私たち老人介護の現場には却って悪影響を及ぼしている。私たちは、シンポジウムや何とか大会の度に繰り返されるこうした主張を「制度政策還元論」と呼んで、少し皮肉っぽく馬鹿にしている。「またあの先生か。外国の話はもういいよ。今日明日のことにはならないしね」という訳だ。
誤解のないように言っておくが、私も現在の老人ケアを巡る制度政策はひどいと思う。特に私が長くいた特別養護老人ホームの職員数などひどいものである。だが私たちは、ひどいからといってケアを、看護を止める訳にはいかない。まさか、社会運動をやって、政策を西欧のどこそこの国並みにしてからちゃんとしたケアをするからそれまで待っててね、と署名やデモに出かける訳にはいかない。「今の制度の下でいい介護はできない」と言われれぱ「そうだ、そうだ」と思いつつも、じゃあ毎日自分のやってることはなんだ、ということになる。
だが本当に、制度が良くなれば介護も良くなるのだろうか。私はそうは思えない。彼らの言う通り、将来制度が良くなるとしよう。その時その良くなった分が、老人のために使われるという保証はどこにあるのか。
その保証は実は、今の制度の下で何をどうやっているか、ということの中にあるのである。「劣悪」だとか「不十分」とか言われる今の職員数で、その条件を十分に生かすような工夫がなされているかどうかが決め手なのだ。もし今の制度の下でそれを生かしてないのなら、制度が良くなっても何にもならないだろう。さらに制度が良くなる一方で、その制度を使う側の主体が崩壊していっているとしたら何にもならないことは言うまでもない。
制度政策を変える運動は偉い人達でやって下さい。私たち現場の人間はそんな暇はないので、まず、現実を変えていきますので。
政策の不備よりもっと不備なもの、それは現場の私たちの創造力と想像カである。何も、今の条件の下で自己献身的に働けばできる、などと言っているのではない。発想を変えるだけで、寝たきり老人のオムツが外れ、痴呆老人がイキイキしてくる実践が各地からいくらでも出てきたではないか。
どうやら問題は、「看護」とはこういうもの、「病院」とはこういうもの、という私たちの共通幻想を打ち破ることのようである。
折りたたむ...心のコミュニケーションで信頼関係を
鳩山坂本病院はその名称の通り埼玉県比企郡鳩山町にあります。鳩山町は埼玉県の中央を占める比企地方の南端に位置する面積約26平方キロメートルの町で、人口は約1万6千人、東京より50キロメートルの自然に恵まれた丘陵地帯です。診療圏としては、鳩山町とこれに隣接する東松山市、坂戸市、毛呂山町、越生町、玉川村、都幾川村の市町村を併せたものとなります。
理事長坂本吉朗は昭和32年、都内上板橋に開業し永年にわたり地域医療に従事してまいりましたが、昭和50年代に入り老人患者が増加し、かつ在宅介護の困難な状況が顕著になって来たため、病院建設の必要性を痛感しました。昭和55年頃より計画に着手し、昭和57年2月、現地に標榜科目を内科、胃腸科、循環器科、呼吸器科、神経内科整形外科、理学診療科、放射線科とし、病床数105床の病院を開設いたしました。以来120床、140床と増床を重ね現在は260床の特例許可老人病床を有するに到りました。
現在の入院患者の年齢構成は70歳未満17.8%、70歳以上82.2%で平均年齢は76.7歳、最高齢は95歳です。又在院期間は1年未満63.4%、1年以上2年未満13.4%、2年以上23.3%で平均在院期間は15.4ケ月です。住所分布は診療圏内が60%、埼玉県内で70%となっており、入院経路も近隣開業医よりの紹介と入院患者家族の紹介および外来よりの入院が多くなっております。又外来診療については、近隣に埼玉医大およびその他の中堅病院がありますが交通不便のため地元の人達は当院を利用することが多く、平日で70〜80名の外来があり、休日や夜間の緊急時にも利用されております。さて、入院患者の状況は男性35%、女性65%で独歩可能11%、護送27%、担送62%となっており、おむつ使用は65%で151名です。
これ等の患者さん達は本来なれば家庭にあって子供や孫達に囲まれ、半生の労苦を忘れ温かく平和な生活を送るべき身が、不幸にして病に倒れ又身体の自由を失い、或は思考に障害を生じてしまい、救いを求めて病院にたどりついた方達です。私達はこれらの人達に対し愛情を注ぎ親切、丁寧をモットーに接し、できる限りの努力をして病を癒やし苦痛をやわらげ、身体の自由と思考、記憶をとり戻すお手伝いをすることが使命と考えております。
特に家族と離れて療養生活を続けて行く不安感を除き、快適で安らぎのある生活を送って頂くために介護の面に重点を置き、以前から今回の老人特例一類看護基準に相当する介護職員を配置しております。入浴週2回、おむつ1日5回プラス臨時、ひげそり、爪切り、清拭等明るく清潔で臭いを無くし、できるだけ患者さんに接する時間を増やし、会話とスキンシップのある介護を心がけてまいりました。
又単調になりがちな入院生活にアクセントをつけるため種々の行事も行っております。例えば、お正月には患者さんに代って神社のお守りをうけて来て配ったり、雛まつり、七夕まつりの飾りつけ、敬老の日の行事(今年はカラオケ大会)等があります。又、四季折々の切り紙や折り紙、造花やぬいぐるみ等を飾り患者さんの目を楽しませるよう努力しております。リハビリテーションに励む患者さんにも遊戯やポール遊び等を取り入れて楽しく訓練できるよう配慮しております。
入院生活の治療の一環としての給食につきましても、患者さん個々の状態を充分に把握して一般食15種、特別治療食24種を、仕込み段階より区別し調理しております。特に気を使うのはミキサー食です。開院当初は主菜と添え物を混ぜてミキサー処理していましたが、同一の味のものが多量に出来てしまい、食べ切れないで残菜が多くでました。そこで、患者さんの味覚、視覚を尊重し、きざみ食で調理したものを味を変えないよう単品ずつミキサーにかけ、かつ盛付時に色彩にも気を配るようにしてから喫食率が向上しました。その他にも患者さん個々の好き嫌い、アレルギー食品等を食札に記入して置き、できる限り患者さんに喜ばれるおいしい給食作りを心がけております。
このような努力の結果、患者さんや家族の方達にも喜ばれ、一旦退院した方の再入院や他の患者さんを紹介して下さる方も多く、又地元開業医の先生方からも継続的に患者紹介がある等、当病院の看護介護水凖に相応の評価を得ているものと思われます。しかしながらまだまだ研究、向上しなければならないことは多々ありますので本会を通じて更に研鑚を重ね、より良い病院となるよう努力して行く所存であります。
折りたたむ...肺炎球菌
肺炎球菌はペニシリンやセフェム系抗生物質を使うとすぐ消えてしまうので、細菌検査ではあまり見つからぬ菌になってしまった。しかし米国での疫学調査では、年間に肺炎球菌肺炎が15〜57万人、肺炎球菌菌血症が1.6〜5.5万人、肺炎球菌髄膜炎が2600〜6200人の発症で、約4万人が肺炎球菌のために死亡していると推定されている。
肺炎は老人になるとグラム陰性桿菌の割合が増加し、とくに入院患者や特別養護老人ホームに入所している老人の肺炎は、半数かそれ以上がグラム陰性桿菌肺炎であるが、社会で働いている老人や自宅に在住している老人の肺炎では肺炎球菌の比重が大きい。また心肺系に病変のある老人は、肺炎になると心不全や呼吸困難が増悪するので、肺炎の予防は老人医療の関心事の一つである。
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌は多糖体の莢膜を持つが、この莢膜に対する抗体が肺炎球菌の感染防禦抗体となる。莢膜は抗原性によって83種類に分類されるが、1988年秋から使用できる様になったニューモバックス(メルク・萬有)は23種類の莢膜多糖を含んでおり、これで肺炎球菌感染症全体の80〜90%をカバーできる。ニューモバックスは1回0.5mlを皮下注あるいは筋注すれば、少なくとも5年以上にわたって有効な血中抗体価が持続する。注射の際の副作用で最も多いのは注射部位の痛みで、このほか数%に全身の違和感、関節痛、37.5℃以下の発熱がみられるが、いずれも軽度で翌日にはほとんど消失する。米国で局所の反応の強く出た例を調べると、5年以内に肺炎球菌ワクチンの接種をうけたことのある例が多いので、抗原抗体反応が関与していることが疑れる。したがって、このワクチンを1回接種すると5年間は再接種しない方が良く、原則として1回接種のワクチンとなる。老人にニューモバックスを接種した時の予防効果は70%程度と考えられている。勿論、肺炎球菌以外の病原体の肺炎や呼吸器感染症の予防に役立たない。
任意接種のワクチン
米国では1977年に肺炎球菌ワクチンが使用される様になった。しかし必ずしも充分に普及しているとは言えない様である。そこで、合衆国政府機関のCDCは
イギリスの老人医療
6月12日夜、秘たちはロンドンに着いた。13日、朝八時過ぎにホテルを出発。オックスフォード・ケンブリッジ両大学の会員制クラブへ向かう。そこで午後5時半までイギリスにおける老人医療の実際について四名の講師によるセミナーを受ける。
1 スコットランド
初めに、イギリス北部スコットランドの老人医療についてエジンバラ大学のウィリアムソン教授の講演があった。スコットランドでは、プライマリケアチームにより、老人科を必要としている患者を選別していく方法をとっている。まず、GP(一般開業医、一人当り2000人担当)が、老人科での治療を必要としている患者を担当した時、老人科専門医へ連絡する。そして、老人科専門医が直接その患者の家庭を訪問し、身体的、精神的、社会的、家庭的二ードを総合した上で老人科がその患者に適しているかどうかの判断を行う。
この家庭訪問の長所は、老人がリラックスした気分で普段のまま診察を受けられること、医療側が環境その他の情報収集をしやすいこと、必要のない老人の入院を防げること、GP・本入および家族に適切なアドバイスが与えられること、などがあげられる。この家庭訪問はGPからの要請があった場合、3分の2は3時間以内に、そして9割はその日のうちに訪問される、という驚くべき早さでなされる。
ウィリアムソン教授の病院において、この家庭訪問の結果、37%が老人科に入院、3%が他科に入院、そして60%はデイホスピタルやショートステイといった在宅を基本とした対応がとられているそうである。家庭訪問の結果、老人科への入院が必要と判断された場合には、その94%は24時間以内に入院処置がとられる。転帰別では70%が家庭復帰、16%が死亡、14%が転院という。家庭へ戻った場合は、元通りGPが担当することになる。
マンパワーについては、現在スコットランドには70名の老人専門医がいるそうである。医学部において老人科が必修になったことにより、優秀な学生で老人科を選択する者が増加しているという。
現状では全ベッドの6分の1を老人病床が占めているが、入院が長期化した場合には、ナーシングホーム等へ退院していぐ傾向がでている。今後の課題はナーシングホームとの連携と質の向上であるという。
2 ノッティンガム
次に、イギリス中部に位置するノッティンガムの老人医療について、ノッティンガム大学病院ボイド博士の講演が行われた。
ノッティンガムでは、75歳という年齢を老人科に値するかどうかの目安とし、老人科と精神科の協力体制の下に老人医療に取り組んでいる。精神科では痴呆老人が80〜90%も占めているという。
地域と患者とのつながりについても重視されている。入院前にはここでも家庭訪問が行われる。入院後は、個々について、毎週、医師、看護婦、理学療怯士、作業療法士、ソーシャルワーカー、訪問ヘルパーによってチームカンファレンスが行われ、きめ細かな対応がなされる。入院前に担当していた君護婦が病院を訪れ患者の様子を確認することも大きな特徴だ。また、病院側からはGPへの電話連絡をとることにより、退院後への連携をとる。
人口60万人のノッティンガムには老人病床は600床、そのうちの80床がノッティンガム大学病院にある。1984年に初めてナーシングホームが設立され、現在はナーシングホームで1400床を擁している。ナーシングホームが設立されたことにより、入院待機患者はいなくなった。ノッティンガム大学病院においても、以前は長期入院用40床、急性期およびリハビリ用40床であったものが、現在は長期入院用10床、急性期およびリハビリ用70床となり、入院期間が短縮化されてきた。
しかし、ナーシングホームは設立申請時の評価により設立許可がおりるため、開所後の質が保持できているかどうかが問題となる。過去2年間に2件のナーシングホームが強制閉鎖となった例もでている。また、ナーシングホームでは一人当り経費が決まっているため、ケアしにくい患者は受け入れたがらない傾向がある。そのため、老人科では長期入院患者は減少しているのに対し、痴呆老人の多い精神科の状況は以前と変わっていないということであった。
3 ニューカッスル
午後に入り、ラドクリフ病院エバンス教授より、ニューカッスルにおける老人医療についての講演に入った。
ニューカッスルでは、一般科と老人科を同病院内で扱うという統合型の医療形式をとっている。この統合型医療の長所は、第一にどのような患者でも受け入れやすいこと、第二は資源の活用がしやすい、高度医療も行いやすいこと、第三は専門知識の普及に役立つこと、第四は老人科医と一般科医の協調性が高まること、第五はマンパワーを集めやすいことである。
この統合型医療で老人科へ入院した場合の転帰をみると、家庭復帰が69%、死亡が21%、外科への転院が4%、リハビリテーション科への転院が6%となっている。また、老人科専門医がいる場合といない場合の在院期間を比較した結果、15%の患者については老人科医を必要とするが、残り85%の患者は一般科医が担当しても差は生れない、と推察されている。
老人専門医の充足という点については、ニューカッスルでは医学教育の早期段階に老人科専門科目を取り入れるように努めた。その結果少しずつではあるが、老人科を希望する学生が増加している。イギリス全体の医学生のうち、老人科を希望しているのはわずか0.3%、ニューカッスルでは1.4%という調査結果がでている。
また、最近では国民の医学倫理への認識も高まっている。自分の手で食べられなくなった時は死を迎える、といったこれまでの見解から、できる限りの治療を受ける、という方向への意識の変化が起きている。病院死の増加もこの意識の変化によるところが大きい、とのことであった。
4 ハル
最後は、イギリス北東部ハルより、ハル王立病院ノックス博士の講演となった。
ハルはヨークシャー地方の中でも最も貧しい地域である。ハル王立病院は、カッスルヒル病院(136床)、キングストン病院(163床)そしてハル王立病院(108床)の3病院が統合された計407床の病院であり、その病棟はナイチンゲールスタイルをとっている。
ここでは、老人科への入院は年齢によってほぼ区分される。つまり、75歳以上の緊急入院患者と以前に入院経験のある患者が老人科への入院が許可される。が、75歳未満の患者でも場合により柔軟に対応されるということであった。入院患者のうち80%が再入院患者、11%が緊急入院の患者で占められている。そして、退院患者の中の8.1%は一ケ月以内に再入院するとのことだ。そのため、常時75〜80%の満床率にしておく必要があるという。
ハル王立病院に入院した場合には、患者の容態に応じて急性期科、慢性期科、リハビリテーション科に選別される。退院まで要する期間は平均2〜3週間という。この早期退院により、家庭復帰の場合にも老人の自立性は高く、また、高度医療をおこなっても経費は一人当り一週約800ポンド(1ポンド約237円)であり、経済的効率もよいということであった。
以上、4名の老人医療に携わる専門医からイギリス各地域における現状についての説明を受け、地域によって異なる対応がなされていることを知った。この対応の違いは、老人医療への焦点のあて方によるものであろう。どの地域においても共通した問題となっているのは、マンパワーの充足と、ナーシングホーム等の老人福祉施設の質の問題であった。特にマンパワーについては国を問わず、いずこも同じ悩みのようである。
DHSSを訪問
16日午後、DHSS(Depart-ment of Health and Social Security.厚生省)のエイブラム博士と会食後、ロンドン・リッチモンドハウスにあるDHSSを訪問した。前日のセミナーにおいてイギリスの老人医療の現状を知ることに加え、DHSSでは政策的方面からのアプローチとなった。
DHSSでは、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを除くイングランドのみの管轄が行われている。エイブラム博士を含め七人の老人保健・福祉担当官より、イングランドにおける今後の方向性を中心に説明を受けた。
DHSSの方針としては、在宅ケアを推進する方向で高齢化社会に対応していく、とのことである。現状では95%が在宅、5%が施設内ケアを受けている。在宅ケアの場合、問題となるのはやはり介護力であり、ここにどれだけのマンパワーを動員することができるかにかかってくる。失業者対策も含め、ホームヘルパー、ホームケア・アシスタントの属用にも力を入れていく。さらに、GPの役割としては予防面に重点をおいた老人サービスを行うようにする。
ケアにかかる費用の点からみると、入院の場合は1週約325ポンド、ナーシングホームなどの施設内ケアの場合は1週約130ポンド、デイセンターでは1日9ポンド、ホームヘルパーは1時間4ポンドである。ケアの種類が多様化していることにより、いかに効率的に利用していくかが財政上からも大きなポイントになるだろう。
また、イギリスの医療を支えているNHS(National Health Service)は、大学卒業生の30%を雇用するヨーロッパ最大の雇用機関であるという、注目すべき数値も示された。
ボーリングブローク病院で
17日朝、ロンドンの中心部より車で約30分程のワンズワース地区にあるボーリングブローク病院を訪ねた。
救急患者用の一般病院を老人病院に転用したという建物は古く、使い勝手はあまりよさそうには見えない。ミラード教授の説明によれば、103床のうち9床が長期入院病床、6床がショートスティ病床、その他が急性期病棟という。スタッフは計300人。年間延べ1000人の入院患者のうち5人に1人は入院後1〜2週間内に死亡。残りのうち25%の患者について長期入院が検討されるそうである。
急性期病棟では、スペースは広くとられているが、リハビリ室、デイルーム等も含めて、設備的には時代遅れの感があった。
9床ある長期入院病棟では、病棟に入るドアから突然雰囲気が変わる。病棟の各個室の壁紙やじゅうたんは、サンプルがあり患者の気にいったものが使われる。さらに、各自の家具調度類が持ち込まれ、入室の際にはたとえ医師であっても患者の承諾を必要とする。家庭がそのまま病院へ引越してきたようであった。
CPAを訪問
最後に私たちが訪れたのは、「高齢に関する政策センター」(The Center for Policy on Ageing 略称CPA)である。15人のスタッフによる民間立の高齢者に関する総合研究所といったところだ。
所長のミドウィンター博士によれば、研究において人生を4つのステージに分けた生活様式で考えている。第一ステージは学生時代まで、第ニステージは仕事と家庭の充実している期間、第三ステージは子供が成長し、自分自身も退職した後、第四ステージが人生の終末期である。この第三ステージをできるだけ長くするため、早期老年期に細心の予防対策を行うことが望ましい。40年間の第三ステージ、そして40秒の第四ステージが理想、という。第四ステージを短くというのは誰もが願うことだけに、この分野については世界 の中心的研究活動を担っているCPAには大きな期待が寄せられる。
オランダ、イタリア、イギリスと三ケ国の老人医療・福祉への取り組みをみてきて、どの国においても高齢化社会を目前に、その対策に追われている様子がうかがえた。わが国では、欧米に追いつけ追いこせ式に言われることがあるが、マンパワーの層の厚さ、施設設備など参考となるところは多々あった。日本にみられるような寝たきり老人にも会わなかった。しかし、その国の現在の老人医療が生れてきた背景には、その国の歴史、文化、生活様式などがあることも強く感じた。他国を学び、わが国ではわが国独自の老人医療 ・福祉体系を築くことが求められると改めて思った次第である。
折りたたむ...![]() |
×閉じる | ![]() |