(A−5 解説)
わが国の従来の医療機関、特に病院では、死は単に忌み嫌うもの、医療サービスの対象外というとらえ方がなされてきたが、今や70歳以上の人のうち、その4分の3は病院で死ぬ時代である。なかでも、老人病院はリスクの高い高齢者をその主な対象とすることから、好むと好まざるとにかかわらず、この問題に取り組むことを余儀なくされるばかりでなく、むしろ、積極的に対応することが期待される。ある程度の高齢に達すれば、大部分の人が『安らかな死』を望んでいる。安らかな死とは、本人も家族も第三者も納得のいく死の形であるが、主体はあくまでも本人と家族であり、病院職員はその環境を整えるといった心構えが重要である。効果の期待できない医療行為で、人生の最後の時がいたずらに浪費されること等があってはならない。
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