老人医療NEWS第27号 |
平成四年度は、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の3年目にあたる。また、平成二年六月に改正された老人福祉法の完全実施が来年4月に迫っている。市町村に老人福祉の仕事の責任が移行する。市町村は、老人保健福祉計画をつくらなければならなくなる。
このような状況のもとで、高齢者福祉の進み具合はどうであろうか。
この2月に各都道府県、指定都市の担当課長に個別に厚生省に来ていただき、各地の実情を聞かせていただいた。さらに当課では、平成2年3月までのデータではあるが、整理し、各県の高齢者福祉の進み方について分析、評価を試みたところである。(結果は3月6日の全国課長会議で公表した。)
その結果明らかになったことは、高齢者福祉については、平成元年度が屈折点とも言えるほど、従来の年に比較してサービス量が増加していることである。この傾向は在宅福祉の分野で特に著しく、平成元年度におけるデイサービスやショートステイの伸びは、対前年50%を上回ったのである。各県からのヒアリングによれば、二〜三年度についてもこれらのサービスの供給量は毎年5割増といったペースで伸びており、元年度で達成した大幅な伸びが数年続くことは、確実である。
ここ数年の間に、わが国の高齢者福祉においては、在宅福祉を中心に地殻変動的な大きな動きが生じている。それは単に量的な拡大に止まらない。在宅福祉が定着し、市町村が中心となる体制が機能することを目指し、各地で様々な取組みが行われている。
現在進行中の在宅福祉の本格的な進展は、福祉の分野においては特別養護老人ホームを始めとする施設の在り方に根本的なインパクトをあたえることとなろう。我々もそのことを念頭において、平成4年度には老人福祉施設についてのモデル事業を試みるつもりである。
福祉における地殻変動は、老人医療にも、(「津波」になるかどうかは別として)影響を及ぼすことは必至であると思う。福祉の動きにも注目していただきたいものである。
折りたたむ...その沿革はフロンティア精神
『老人にも明日がある』、この理念のもとに今から約20年前、昭和47年11月に埼玉県川越市笠幡、当時の新興住宅地に霞ヶ関中央病院が開設されました(48床)。開設者の齊藤正男(現医療法人真正会・社会福祉法人真寿会理事長)が、福祉の心を原点に老人の医療と福祉の理想を求めている時に、老人医療に情熱を燃やす当時36歳の青年医師、池田弘(現霞ヶ関中央病院院長)との出会いが端緒となってスタートしたのです。
その当時、埼玉県では唯一の老人医療の専門病院だったために、周囲の目は、高齢の患者さんに対する積極的な取り組みやリハビリテーションは無駄なことだと冷ややかで、大変非難され、苦労したと聞いています。高校生だった私の目には、ほとんど資力のない二人の勇気ある行動がとてもまぶしく映り、アメリカのフロンティア精神と似たものを感じました。もちろん、私自身が医者を志すきっかけのひとつにもなりました。
開設時より付添い一切不要を決め、その結果、介護業務を看護婦が全て引き受けていたそうですから、現在の当院のスタイルを考えると頭の下がる思いです(開設当初には介護職員はいなかったそうです。)病院は全てのスタッフの努力と、社会のニーズの高まりから、年々増床を重ね、昭和59年には、200床の一般病院(基準看護T類)にまで成長していきました。一方、昭和52年には特別養護老人ホーム真寿園(当初定員80人、現在88人)を開設し、この施設と病院が核となって現在があるわけです。当医療法人と社会福祉法人真寿会の組織図は図の通りです。
このように、一貫してよりよい老人医療を目指してきましたが、慢性期要介護老人への対応に苦慮してきた現実に対して『老人医療の機能分化』の必要を痛感しました。そこで、急性期と慢性期の患者さんの混在を避け、病院に合った医療サービスを提供するために誕生したのが霞が関中央南病院(昭和62年開設、百床の特例許可老人病院)なのです。
『安心とゆとり』をテーマに、介護面での充実はもとより、一ベッド当たりの占有床面積は6.6u、廊下幅は2・2mあり、病室とナースステーションの前にデイルームを広くとりました。食堂も患者さん専用を設け、病室内で食事をする患者さんは極く限られています。このような開設経緯とハード面、ソフト面でのアプローチのおかげで、平成2年6月にはスムーズな形で入院医療管理料T類を導入できました。
長期入院の是正についても、リハビリテーションの強化として運動療法施設の承認を得、外来部門にデイホスピタル、在宅医療を持ち、現在、月の入退院数がそれぞれ20〜25人、平均在院日数も150日前後となっています。介護力強化はもちろん、これらの機能は全て先行投資の形(理事長のよく言われる『健全な赤字部門』)でスタートし、最近になりやっと陽が当たってきたわけです。
患者さんの医療ニーズを常に的確に把握することを一体感の中に含めながら対応することが、患者さん個々のQOL向上のキーワードになると確信しております。
最後に、昨年六月に入会させていただき、会員の先生方の前向きな姿勢や総合研究会での各病院スタッフの情熱に触れ、『老人にも明日がある』『老人病院には明日がある』という気持ちで、ともに頑張る意欲が湧いておりますのでよろしくお願いいたします。
折りたたむ...老人、ことに高齢者の治療にあたっては、薬剤投与を適正医療の範囲内で最小限度量までしぼりこむ努力が必要と思われます。
私自身はそのための方法として一般理学療法の外に、針治療や浄血療法などを多用しておりますが、これら東洋医学的な療法の効果の大きいことにはいつもながら驚かされます。また、薬剤投与についても、できるだけ漢方薬の併用または単独使用に切り替えています。
ただ、漢方はその独特な専門用語が難解であることや、薬理についての根本的な発想の違いから、現代医学を学んできた医師の多くはついその援用を敬遠しがちになります。
そこで今回は、一切の専門用語や理屈をぬきにして、知っていると我々老人医療会の臨床家にとって結構役に立つ豆知識を集めてみました。
以上、一応試みる価値がある方剤を列記しましたが、最初にお断りしたように、体質、証、弁症などの説明を一切省いてありますので、無効の場合や合わない例では直ちに中止して下さい。
折りたたむ...2月14日、中央社会保険医療協議会は診療報酬の改定等について諮問案通り答申した。これにより4月1日より点数が改定される。
今回の改定は、老人の心身の特性にふさわしい医療を確保し、医療の質と効率を高める観点から、老人診療報酬および老人保健施設療養費の改定、老人訪問看護療養費の創設等が行われている。
改定の趣旨
医 科
付添看護の是正と老人病院の介護機能の充実
在宅医療の推進
老人保健施設における適切な施設療養の確保
痴呆性老人対策の推進
リハビリテーションの拡充
老人病院の対象要件の見直し
その他
歯 科
有床義歯指導の評価
在宅歯科診療の評価
床義歯(チェアーサイド)技術の評価
当会が制度導入を熱望して、特例許可老人病院入院医療管理料(753病棟)が制度化され満2年が経過した。平成4年の4・4改定では、753が高く評価され、当会の牛のように根気強い努力が認められた思いが強い。さらに、今年秋より老人病院制度の見直しが行われ「老人専門病院制度の確立」と「老人病院の汚名の返上」という目的は、ある程度達成された。改めて日本医師会をはじめとする医療関係団体および厚生省に敬意を表明するとともに、同志会員のこれまでの努力と協力に敬愛の念を禁じえない。
当会は、今後とも老人専門医療の確立と医療の質の向上に邁進するという新たな決意をもって、活動を円滑に進めていくことが再確認され、5月30日の総会で議決される予定である。
昭和58年4月から実施された現行の特例許可老人病院制度は、一般病院と老人病院を区分し、老人病院に低い地位を提供するかのように認識されてしまった。これには、いわゆる老人病院の不祥事の続発という昭和50年代半ばの記憶が作用したことは確かである。
しかし、当初少数ではあったが、この窮状を打破して、質の高い老人医療を提供したいと願う同誌により、当会は結成され、積極的な活動を展開してきたのである。そして我々は今「努力は報われる」という確実な成果を手にすることができた。
しかし、一方では、当会が熱望した現行入院医療管理料制度の円滑な発展と、導入病院の質の確保向上という大きな責任を担うことも必要となった。
その責任を果す具体的行動として、当会幹事会は、管理料導入病院の情報交換、研究・研修機会の提供を主な目的として、導入病院連絡会の幅広い活動に全面的に協力することを決定した。全国の導入病院が一体となって、質の向上を達成したい。
特例許可老人病院入院医療管理料導入病院連絡会第6回全体会議の開催
老人の専門医療を考える会は昭和59年に発足し、老人医療の質の向上を目指して、これまで積極的に活動致してまいりました。特例許可老人病院入院医療管理料が平成2年に新設後、当会では会員のうち同承認病院および承認希望病院を対象とした連絡会を、平成2年11月16日に発足致しました。その後、約70病院で4回のワークショップを開催し、質の向上と制度の適正化をもとめ研鑽を積むとともに、同制度の拡大、発展のため厚生省当局との話し合いを進めさせていただきました。
今年度4月1日の老人診療報酬の改定で、入院医療管理料の点数の大幅なアップと同V類の新設により、今後、入院医療管理料導入病院が一層増加することが見込まれております。しかしながら、入院医療管理料制度のよりよい方向への存続をはかるためには、入院医療管理料導入病院の質の維持・向上が不可欠であると考えます。そこで、当連絡会と致しましては今後の連絡会の運営のあり方等を含めた幅広い討議を行うため、左記のように、第6回全体会議および懇談会を開催致しますのでご案内申し上げます。
=第6回全体会議開催概要= | |
事務局 | 老人の専門医療を考える会 |
TEL 03-5386-4328 | |
世話人 | 上川病院理事長 吉岡充 |
大宮共立病院長 漆原 彰 | |
日 時 | 平成4年6月6日(土) |
午後2〜5時 全体会議 | |
午後5時30分〜 懇談会 | |
会 場 | 京王プラザホテル(東京) |
講 師 | 厚生省老人保健課長 伊藤雅治氏 |
議 題 | 特例許可老人病院入院医療管理料導入病院の今後のあり方 |
会 費 | 15,000円(懇談会費込) |
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