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老人医療NEWS第53号 |
介護保険制度についてとやかく言う時期ではないことはわかっているが、老人の専門医療という立場から、デイケアの医療保険適用が必要であることを主張したい。
介護保険制度によって、老人デイケアは全て介護保険適用ということになった。確かに、介護保険でデイケアを給付することは、有効な手段ではあるが、病院や診療所の行うデイケアに一切、医療保険が適用されていないのは、むしろ不自然だと言わざるをえない。
デイケアの歴史を知っている人であれば、デイケアが長期入院を是正したり、患者さんのQOLを向上するという効果があることを十分に理解していると思う。問題は、要介護や要支援とならない人に対しても、ごくまれではあるがデイケアが有効な場合もあることで、介護保険以外でデイケアを給付しないということを、何とか改善したいのである。
老人の専門医療を推進させる同志として、デイケアの質の向上にこれまで努力してきたし、何とか医療保険でデイケアができないかと考えるのは、自然なことである。
介護保険のデイケアに対し、医療保険のデイケアは、リハビリテーション目的により、リハビリテーション職員の複数配置や3対1の配置基準でもよいと考える。また、施設基準は別にして、スペースを十分に取ってよい。なぜ、医療保険が必要かということについては、介護認定外の利用者の対応やリハビリテーション職員の積極的配置という理由意外に治療過程上の問題がある。
急性期病院から老人専門病院に転院してくる患者さんに対し、デイケアを直ちに利用することで、家庭復帰を可能とする患者さんは少なくない。しかし、デイケアが介護保険だけに適用となっているため、要介護認定を受けなければデイケアを開始できない。このことが、家庭復帰を遅らせて、長期入院につながるのであれば、何のためのリハビリテーションであろうか。
医療保険のデイケアへの参入ハードルを高く設定してもよいから、次の診療報酬改定では、リハビリテーション医療や老年医学の必要性に応じてデイケアを医療保険適用にすべきであると考える。対象者も限定的になるかもしれないが、老人の専門医療の確立という観点からも、やはり改正すべきといえよう。
介護保険の中の医療部分と、医療保険の中の今にも残る介護部分を明確に区別すること自体に、かなり難しい面があり、全てのケースを満足させる制度を構築することがいかに困難であるかは、十分に理解しているつもりだ。しかし、どこまでが医療保険で、どこまでが介護保険かという議論があるのであれば、入院してから6ヶ月までが医療保険で6ヶ月以降は介護保険という考え方も成立するはずである。そのようになれば、医療保険と介護保険の両方に同じサービスがあることが前提となり、デイケアも双方になければ難しいのではないか。ものの考え方として、入院は介護保険と医療保険のどちらにもあり、同じようなものであるといっているのに、デイケアだけは片方だけというのがおかしいのではないだろうか。
これから、介護保険と医療保険の再区分の議論がおこるのだろうが、老人の専門医療という立場からも、十分な理論武装が必要であると思う。患者対介護職員の3対1問題もあり、厚生労働省も根拠を示して、十分な整備に進めて欲しい。
デイケアの医療保険適用の議論は、全体からみれば小さな問題かもしれないが、医療保険と介護保険で老人医療を区分するということがいかに困難であり、その分正確な実践データから議論する必要があるということを物語っているように思う。この時期にそれぞれの施設でデイケアの実績を積んで欲しい。(13/3)